Mid-life Crisis (ミッドライフクライシス)とは?

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porsche mid-life crisis ミッドライフクライシス 中年の危機

アメリカの映画やドラマを見ていて、”mid-life crisis”という言葉を耳にしたことがないだろうか?これ自体がテーマになっている作品も多数あり、こちらでは日常的に話題に上る表現である。

日本でも精神科や心理学の専門家が使ったりしているようだが、一般に認識されているとは言い難い。「中年の危機」とは何のことだろうか?その説明に入る前に、個人的なお知らせを少し紹介したい。

実は先日、英語でインタビューを受けた。Hapa Eikaiwaという英語学習サイトが配信しているPodcast用の番組で、私がどのように英語を学んできたか、仕事に使っているか、英語学習に対して何を考えるか、などを話している。ハッキリいって、1年前までの私ならこういうインタビューは受けなかっただろう。人前で話すのは好きでないし、まして英語でインタビューなんて誰にどんな風に批評されるか分かったものではない。一応、英語学習本の著者だったりするので、そのプレッシャーは相当なものだ。

だが、恥をさらすのを覚悟でインタビューを受けた。満足できる内容とはほど遠いが、自分のコンフォートゾーンを出る意味でやってみた。こういった心境の変化はmid-life crisisも影響しているように思う。その関係を掘り下げながら解説してみたい。

(Podcast番組は⇒こちらで聴くことができます。英語学習に興味がある方はぜひ)

前置きが長くなったが、アメリカでの使われ方から、私はmid-life crisisを以下のような概念、現象だと捉えている。
1)40代後半~50代という年齢になり、生活がある程度安定して先が見えた時に「自分にはもっと違う人生があったのではないか?」と疑問を感じる心理状態
2)上記の心理から、突発的な行動に出てしまう現象。例えば、不倫をしたり、急に高価なものを購入したり、変わった趣味を始めたり、など
3)家族のために頑張ってきた、いい夫、いい父親、いい妻、いい母親をやめたくなる
4)自分の体力、能力、精神力の限界が見えてきて、考え方が急に変わる
5)自分が思い描いてきた理想の人生がこの先にないと分かって現実を痛感する

2)の「高価なもの」の例として、男性はポルシェかハーレイがお決まりになっていて、この年代の人が買うと、「あーあいつ、典型的なmid-life crisisだよ」と言われてしまう。このビデオを見て欲しい。私の好きなロスト・イン・トランスレーションの一コマで、1分20秒~30秒のシーンに思いっきり揶揄が入っている。

ボブ:(結婚して)25年だよ
シャーロット:あなた今、たぶんmid-life crisisなのね。もうポルシェ買った?
ボブ:実は・・・ちょうどポルシェを買おうと思ってた

実際、アメリカでは中年の離婚率が高いそうだ。日本でよく起こる「熟年離婚」と違うのは、子育てはまだ終わってなく親としての責任がある、家のローンだって残っている。だが自分の人生を考えざるを得ない心理状態になるところだ。

私の近くにも、離婚を考えて別居中の夫婦がいて、上の子は大学生、下の子は高校生という年齢。奥さん側の話を聞いていると、まさに「自分にはもっと違う人生があったのでは?」状態で、色々と諭してみたが聞く耳を持ってもらえない。

日本人の女友達に「もう一度アメリカに来た時からぜんぶやり直したい」と思ってウツ気味になる、という人がいる。別の友達は、ストレスから自律神経失調症と診断された。女性の場合、更年期障害という肉体的な試練もあって、mid-life crisisを余計に悪化させる可能性がある。

かくいう私も、この2年くらい肉体面、精神面で弱っていて、何を目標や楽しみにこれからの人生を生きていけばいいのか分からず混乱している。仕事の能力やスキルに飛躍的な向上が望めなくなり、どうやってビジネスを続けていこうか、かなり重い気分だ。人間関係でもうまくいかないことが多く、自分の人格否定までするようになった。上記の4と5が特に強いと思う。

にも拘わらず、散財して破産とか家庭崩壊とかの惨事に今のところ至っていないのは、このmid-life crisisという概念を知っているから、という気がするのだ。つまり「私は今、mid-life crisisなんだ」と自分にラベルを貼ってしまうことで、ひどく思い悩んだり、極端な行動に出ないで済んでいる。「こういう心理状態は中年のある時期に誰でも通る一過性もの、そのうち抜け出せる」と思って気が楽になったことが何度もある。

そしてポジティブな面も見つかっている。自分の限界が見えてきたことで、取り繕っても仕方ない、というある種の開き直りが出てきた。Podcastのインタビューを受けたのはそんな心理からだ。以前の私なら、人からの評価が怖かったり、自信のなさから絶対に受けなかっただろう。裏返すと、私自身の理想が高すぎて、それを満たすことができないから嫌だったのだと思う。

正直、英語は昔より下手になっている気がするし、日本語でも英語でも良い話し手でない自覚があるので、記事ならまだしも、放送のインタビューは本当に向いてない。それでも敢えて受けたのは、自分の能力を客観的に判断できるようになって、不完全だけど現実の自分と向き合えるようになったからだと思う。

もしあなたが中年と言われる年齢で、辛いと感じることが多ければ、このmid-life crisisという言葉を思い出して欲しい。そして言い訳に使ってしまおう。「私はmid-life crisisなんだからしょうがない」と。もっと違う人生があったのでは?と疑問を持った時、「mid-life crisisなんじゃないの?」と自問自答してみよう。もしかしたら、それで救われること、救われる人生もあるのでは?もちろん、体や心が深刻な病気になっていることもあるので、症状が重いようなら専門家に相談すべきだが。

少し前の作品になってしまうが、mid-life crisisを本当にうまく描写した映画「アメリカン・ビューティ」。主役のケビン・スペイシーとアネット・ベニングが完璧なmid-life crisisの夫婦を演じている。多額の退職金を手にしてリストラされた夫。カムリを売って夢だったファイアーバードを買ったり、隣りの高校生からマリファナを手に入れたり、娘の友人に一目惚れして何とか関係を持とうとしたりと、奇行に走る。上昇志向の強い妻は仕事と家庭に行き詰って不倫、ストレス発散のために射撃を始める。これを見れば「あーそういうことなのね」と、mid-life crisisが引き起こす心理や行動が理解できると思う。お勧めします。

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