リベラルの逆襲

3月31日に「エア・アメリカ 」というラジオ局が開局し、話題となっている。 エア・アメリカは、看板ホストとしてコメディアンのアル・フランケン氏を起用した。フランケン氏は民主党支持者で、言論者としても幅広い活動を行なっている。最近の著書に、ブッシュ政権や保守派の言論者を批判した「Lies and the Lying Liars Who Tell Them: A Fair and Balanced Look at the Right」があり、これが大きなヒット作となった。もう1人の看板ホストは、同じくコメディアンのジャ二ーン・ガロファロ氏。彼女はイラクの反戦運動に 最も熱心だった芸能人の1人だ。 このエア・アメリカは、リベラル派による政治トークショーを専門とするラジオ局だ(注:文末を参照)。「ネオコン」という言葉が日本でも使われるようになったほど、アメリカはブッシュ政権と共にこの4年間で極右に転じていった。言論界においても、保守派が圧倒的な存在感を持つようになり、テレビの出演やトーク番組の登板などで引っ張りだことなった。マイケル・ムーア氏のような例外はあるが、リベラル派はしばらく言論界から締め出される形になっていた。つまり、保守が売れる時代だったのだ。 しかし最近、アメリカはブッシュ政権に対する懐疑心を募らせている。同時多発テロに対する警戒の甘さが問題視され、ウサマ・ビン・ラディン氏をいまだに拘束できず、さらには戦争によってイラクの混乱を招いた。国内においても、雇用が悪化の一路を辿り、ガソリン価格が高騰して消費者を圧迫している。リベラル派はここに来て、「もう黙っていられない」とばかりにあちこちで言論活動を再開している。エア・アメリカはその一例だ。正確に言えば、彼らはずっと活動していたのかもしれないが、メディアがほとんど発言の場を与えなかったのだ。 エア・アメリカの経営陣は、若いアントレプレナーのグループだ。投資家から3000万ドル(約30億円)を募り、「リベラル派ラジオ局」というベンチャーを起こした。これがアメリカの面白いところだ。「政治論に一石を投じたかった。大儲けをするつもりはない」とCEOのマーク・ウォルシュ氏は言うが、保守派のトーク番組が多い中、「これからはリベラルが売れる」という前提での起業だ。3年で利益を出す予定らしい。 折しも、今年は大統領選の年。リベラル派は「打倒ブッシュ」で一丸となっている。彼らのカムバックは、政権交代を第一の目的としているのだろうが、選挙の前に言論界が活発になるのは、歓迎すべきことだ。そしてこの4年間、右傾化していたメディアにも、ようやく変化の兆しが見えている。市民も「ブッシュ批判 =愛国心に欠ける非国民」のような極端な発想から開放されつつある。ようやく、まともに議論できる環境になった。それでこそ、アメリカの民主主義だ。 注:アメリカにはAM、FMあわせて数千にのぼるラジオ局が存在する。その放送内容は細分化しており、例えば音楽なら、ポップ、ジャズ、ロック、カントリーなどのジャンルで完璧に分かれているし、スポーツならスポーツだけ、ニュースなら朝から晩までニュースなど、局ごとに専門分野があるのがアメリカのラジオ放送の特徴となっている。